インタビュー

的場 由木さん

的場 由木さん

(まとば ゆき)

インタビュー日時:

卒業:2000年短大卒

所属:特定非営利活動法人すまい・まちづくり支援機構

肩書:理事

経歴

2000年3月、慶應義塾看護短期大学卒業(短大11回生)後、東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻に編入学し、保健師免許を取得。特定非営利活動法人自立支援センターふるさとの会、特定非営利活動法人すまい・まちづくり支援機構にて生活困窮者支援に携る。

現在、特定非営利活動法人すまい・まちづくり支援機構理事、更生保護法人同歩会保護司

所属されている「特定非営利活動法人すまい・まちづくり支援機構」はどのような特定非営利活動法人ですか?

まず、特定非営利活動法人自立支援センターふるさとの会(以下:ふるさとの会)は、路上生活の人への支援のために始まった団体ですが、今は路上生活を経験していなくても行き場所がない人も対象にして、生活困窮者全般の支援をしています。「特定非営利活動法人すまい・まちづくり支援機構(以下:すまい・まちづくり支援機構)」はふるさとの会が作った非営利活動法人(以下:NPO)です。ふるさとの会が、生活困窮者を支援している様々なNPOを支援するNPOを作ろうということで設立しました。生活困窮者は色々な制度から漏れて困った状態になっているので、支援しているNPOは新しいものを作っていかなくてはなりません。新しい制度だとか仕組みを作っていくためには、やはりNPOを支援するバックアップが必要なのです。

 現在の活動としては、例えば、空き家の物件を借り入れて再利用できるように改装し、住むところがない人に提供しています。そこに介護保険や障害者自立支援の制度などを組み合わせて在宅ケアを行い、地域生活が成り立つようにする活動をしています。

どのようなお仕事を担当されているのですか?

 すまい・まちづくり支援機構は、ハードの部分とソフトの部分の両方を支援するNPOです。私はその中で、生活困窮者のケアをしている人々をバックアップする仕事、つまりソフトの部分を担当しています。また、ふるさとの会では、コーディネーターも務めています。 

ふるさとの会では、日常生活支援の制度的な改革を推し進めているところです。本来家族が行うような日常生活支援にきちんと制度的な位置づけがあれば、介護殺人など悲惨なことが起こる前に、本人も家族も救うことができます。また、家族がおらず行き場所がないという人も地域で生活できると思います。これらに加えて、支援付住宅に関する研究活動を報告するためのシンポジウムなどを開催しています。

保健師の資格が生かされるというのはどういう部分でしょうか?  

 健康問題ということであれば、一つは生活困窮者に対する援助に活かされていると思います。生活が成り立たないと健康を害します。健康問題は生活困窮という形で現れてくるので、両者の関係は密接です。また、精神保健でも活かされていると思います。統合失調症の方に対しても支援は十分ではなく、さらにアルコール依存の人や覚せい剤の人は支援を受けることがもっと難しい状況にあります。健康問題を抱えている状況でも、自ら医療機関を受診したり、必要な相談機関に出向いてうまく相談することが難しい人たちがたくさんいます。保健師は医療機関につながることができない人々の所へ出かけ、待っていては救えない人を助けることができる職種だと思います。

雇用支援について

 収入があれば生活が安定するというわけではありません。人間が安定して暮らすためには、物質的なものだけではなく、例えば、困った時に誰か相談できる人がいるかなど、精神的な面を支援することが重要だと思います。そこで、ただ雇用をすればいいわけではないのです。我慢しているわけではないけれど、自分の抱えているストレスを伝えられず、それが限界になると失踪してしまう人もいます。そのような人はやる気がないということで片付けられてしまいます。しかし、やる気と自信は連動しているので、その人にとってしっくりくる仕事を見つける支援が必要です。やる気が出てくると自信も出てくるものです。その人の能力に合った仕事を見つけるというのも大変なことだと思いますが、努力をしています。

若い人への支援について

 最近は若い人への支援も多くなっています。例えば、実家もいろいろな事情を抱えていらっしゃって、養育するのがなかなか難しい環境で非行に走り、少年院に入っても帰る場所がないという場合があります。また、虐待の経験などいろいろな経験があると自分の生活を安定させることが精神的に難しいと思います。そのような人々が、希望を持って生活をするためには、10年、20年という単位で少しずつ自分の人生を受け入れて歩んでいけるような、長い目で見ながらの支援が求められていると感じています。

仕事のやりがいはどのようなところですか?

日本のひずみ、ゆがみがとても分かる仕事だと思います。以前は社会的入院という形で長期入院がありましたが、今は3か月経つと病院も経営が成り立っていかないため、退院しなければなりません。路上生活をしながら、人工肛門をつけているような人もいます。また、ストレッチャーに乗ったような状態で福祉事務所の前に置かれてしまうケースもあります。ケースワーカーもとても大変だと思います。病院からは絶対出なければいけないということで、老人ホームとか介護施設をしらみつぶしに電話したりしています。一方で刑務所にはお年寄りの方も多く、彼らには生活のサポートが必要で、かつ支えてくれる家族もおらずお金もないという状態です。

 このような日本のひずみ、ゆがみを感じつつも、そこから、新しいことを作る仕事はやりがいがあります。まだ作られていないものを作るというのは大変なところもありますが面白いです。

今後について

これからの自分の姿は、想像がつかないところもあります。これからはさらに高齢者が増えますし、看取りの場がない人も増えてくると思います。かつ単身でお金がない人たちも増えてくると思います。今、表面化してきていますが、もっともっと表面化してくると思います。それによって施設ではなく地域で看取っていかざるを得ない状況になると思います。先ほどもお話ししたように、家族機能を地域で担えるような状態が絶対に必要ですし、そうならなければ日本は大変なことになると思います。システムの問題と一人ひとりの尊厳の問題を常に考えていきたいと思います。

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